vCard 4.0 と「フリガナ」 ― 2012年09月09日
以下、去年9月にGoogle+ で共有した内容 の転載です。少し修正してあります。
vCard についての備忘録。
パソコンの住所録や、携帯電話やスマートフォンの電話帳のデータの交換形式として vCard というのがある。
この vCard では名前、住所、電話番号や写真などをテキストデータにすることができるのだけど、 日本人にとっておなじみの振り仮名のためのフィールドが定義されていない。
しかし、それでは不便なので各社各様に拡張されてきた。
携帯電話の場合
たとえば、携帯電話では電話帳のエントリをメールに添付して送り出すといったことができるが、 この場合でも vCard が使われている。
私の携帯の場合は vCard 2.1 (*1) の SOUND フィールドが振り仮名に使われている。
BEGIN:VCARD VERSION:2.1 N;CHARSET=SHIFT_JIS:山田葵;;;; SOUND;X-IRMC-N;CHARSET=SHIFT_JIS:ヤマダアオイ;;;; ADR;HOME;CHARSET=SHIFT_JIS:;北海道札幌市清田区平岡;;;;004-0889; TEL;VOICE:0000000000 EMAIL;HOME:yamada@example.jp END:VCARD
携帯電話では赤外線通信による電話帳データのやりとりができるが、これを規定した IrMC という規格(*2)でもvCard が参照されているようである。なお、IrMC については IrDA のメンバー、subscriber でないと参照できないので公開されてる他の文書(*3) などからの推測である。
(*1) vCard The Electronic Business Card Version 2.1 September 18, 1996. http://www.imc.org/pdi/vcard-21.txt
(*2) Infrared Mobile Communications (IrMC) Including iMelody http://irda.affiniscape.com/displaycommon.cfm?an=1&subarticlenbr=7#IrMC
(*3) MCPC TR-010 Bluetooth Phonebook Access Profile Implementation Guideline Version 1.0 January 11, 2008. http://www.mcpc-jp.org/news/pdf/TR-010PBAP_V1.0.pdf
この vCard 2.1 では SOUND フィールドに X-IRMC-N パラメーターによって、 N フィールドと同じ形式で振り仮名情報を指定している。
Bluetooth を使ったデータ交換を記述した MCPC TR-010 では vCard 3.0(*4) で定義されている SORT-STRING フィールド(*5)についても言及されている。
(*4) vCard MIME Directory Profile September 1998. http://tools.ietf.org/html/rfc2426#section-3.6.5
(*5) vCard 3.0 の SORT-STRING の定義 http://tools.ietf.org/html/rfc2426#section-3.6.5
この定義では、vCard エントリ中の FN および N を並び替えるのに使用できる ロケール、あるいは各国語固有の文字列を設定できる。
OS X の場合
携帯電話で振り仮名に使われている SOUND フィールドであるが、vCard 3.0 の定義では 実際の音声データをバイナリ化して格納することを意図したものであり、文字列で並び替えに使うことを 意図しているものではない。音声のエンコーディングは IANA のレジストリに登録されたもので あればなんでもよい。
vCard を使った別の例ととして、OS X の「アドレスブック」がある。アドレスブックのエントリは vCard で内容を書き出すことができ、OS X Lion 付属のアドレスブックだと以下のような 形式のデータになる。
BEGIN:VCARD VERSION:3.0 N:山田;葵;;; FN:山田 葵 X-PHONETIC-FIRST-NAME:あおい X-PHONETIC-LAST-NAME:やまだ EMAIL;type=INTERNET;type=HOME;type=pref:yamada@example.jp TEL;type=HOME;type=pref:(00) 0000 0000 item1.ADR;type=HOME;type=pref:;;平岡;札幌市清田区;北海道;004-0889;日本 END:VCARD
このように X-PHONETIC-FIRST-NAME と X-PHONETIC-LAST-NAME という フィールドを独自に定義して振り仮名情報をデータ化している。
雑談から vCard 4.0
さて、ある時 (2010年の6月23日よりは前)、ある場所(*6)で雑談している時に vCard についての話題が出た。
(*6) 本郷の居酒屋の白糸だったかなと思ったら、上野の喫茶店ではないか、という突っ込みがあった。そうだったかも。
正確な内容は忘れたが、だいたいこんなことが話題になったと思う。
- vCard だと振り仮名が「名前」にしか振れないので、組織名などで並びかえたい時は面倒だよね
- バージョンによって定義混乱してる
- そういや vCard の改訂の話がメーリングリストで展開しているよ
というものだった。会話の相手が vCard 関連のコードをいじってる人だったので最近感じてた 不便と一緒に振ってみたのだった。そのころ私は
- GNOME の標準のメールソフト Evolution では振り仮名をそもそも振れない
- Android と Gmail の連絡先の同期が振り仮名まわりの挙動が怪しい
- Mac OS X のアドレスブック、Windows の Outlook などでそれぞれ独自に定義してる
といったことに不満を持ってて、ちょうどいろいろ調べていた。
そんな会話の後、vCard 改訂などの話題のための IETF のメーリングリストで議論が始まった(*7)。そして、彼も議論に加わった。
そして議論は進み、時間は過ぎ、2011年の8月、vCard 4.0 が RFC 6350 として文書化された(*8)。
(*8) vCard Format Specification August 2011 http://tools.ietf.org/html/rfc6350
これによると、SORT-AS というパラメーターが定義され、このパラメーターがつけられている プロパティを並び替えるのに使える言語固有の文字列が指定できるようになった。
vCard 4.0 では、N および ORG プロパティにそれぞれ SORT-AS パラメーターが指定できる(MAY)と なっている。
"The SORT-AS parameter MAY be applied to this property."
これを使えばたぶんこう書けるのだろう。
BEGIN:VCARD VERSION:4.0 FN:山田 葵 N;SORT-AS="やまだ,あおい":山田;葵;;; ORG;SORT-AS="ワグナリア":和具菜利亜 END:VCARD
これにより、名前だけでなく、組織名でも振り仮名等で並び替えができるようになった。
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